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教えよう - いま小学校で求められるボールゲーム「タグラグビー」の魅力

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いま小学校で求められるボールゲーム「タグラグビー」の魅力

一見、みんなが嬉々としてやっているように見えるボールゲームの授業も、苦手な子はゲームにほとんど参加できていないし、とくにサッカーやバスケットボールにおいては、それらを得意とする子との間に顕在化する埋めがたい個人差や男女差が、体育の授業づくりを難しいものにしている現状はすでに“小学校の体育授業をめぐる問題と「タグラグビー」”で述べた通りです。そのような状況の中で、いま小学校で求められるボールゲームとは、苦手な子も参加しやすいもう少し「やさしい」ボールゲーム、そして、みんなで一緒に楽しめる個人差や男女差が顕在化しにくい「やさしい」ボールゲームではないでしょうか。タグラグビーは、こういった小学校の先生方のニーズに応えられる「やさしい」ボールゲームだからこそ、全国で注目されているのです。ここでは、そのようなタグラグビーの魅力を4つの観点から説明してみます。

魅力1 低学年の学習経験から発展させやすい運動

タグラグビーは小さな子どもたちが大好きな鬼遊び(鬼ごっこ)と深く関連するボールゲームという点で、小学生にとって、とても取り組みやすいボールゲームと言えます。鬼から逃げようとして急に方向やスピードを変える、鬼のいないスペースを探して逃げる、鬼になったときは相手の動きに合わせて追いかけていく…等々の動きは、ボールゲーム全般に関係するということはよく言われる通りです。

中でもタグラグビーは、ボールを抱えて逃げ、また、ボールを持っている相手を追いかけていくといったプレーの連続から成り立っているので、他のどのボールゲームよりも鬼遊びとダイレクトに結びつくボールゲームと言うことができます。このことによって、低学年で鬼遊びを経験した後に、中学年でその経験を活かしながら自然に学習を発展させやすいボールゲームということができるでしょう。

魅力2 どの子も、いま持っている力で楽しむやさしい学習を導きやすい運動

第2に、タグラグビーはゲームに参加するために必要となる個人的技術が他のボールゲームに比べてやさしいため、運動が苦手な子も含めて、どの子もいま持っている力で楽しむやさしい学習を導きやすいボールゲームと言えます。タグラグビーでは、パスは前に投げられないので、パスは後ろへ後ろへと回ってきます。ボールゲームが苦手な子はどうしても後ろや隅っこに引っ込みがちになり、ボールに触れないことも多いのですが、タグラグビーではパスは後ろへ回ってくるので、結果的にボールを手にする機会が、苦手な子も含めた多くの子どもにばらける傾向があります。

ただし、このようにボールを手にする機会が多くても、ボールを持った次にやることが難しいのでは、苦手な子はやはりゲームに参加することが難しくなってしまいます。けれどもタグラグビーの場合は、ボールを持ったらそのまま前に走るだけでゲームに参加できます。このゲーム参加のために必要な個人的技術が、他のボールゲームのドリブル等に比べると相当にやさしいということが、タグラグビーにおいて苦手な子がゲームへ参加できる重要なポイントになっています。

さらに、タグラグビーは他のボールゲームに比べて得点の仕方がやさしいと言えます。攻守混合系のボールゲームのほとんどは、得点するために中央にあるゴールへシュートをするという難しい課題が最後に待ち受けています。そのことが、苦手な子が得点経験を持ちにくい現実を導くわけですが、タグラグビーでは、左右のタッチラインの間に広く開かれたゴールゾーン(インゴール)のどこでもよいので走り込んでボールを置くだけで得点(トライ)となるため、苦手な子も含めどの子も得点できる可能性が非常に高いのです。実際、タグラグビーの授業では、クラスの全員が得点できたということは珍しい話ではありません。

守りの場面においても、タグラグビーではボールを持って走っている相手チームのプレーヤーを追いかけていって、しっぽとり鬼ごっこの要領で腰につけているタグをとればよいだけなので、守り方が他のボールゲームに比べて具体的でわかりやすく、また、タグをとれば目の前で相手の前進が止まりますから、守りで自分が貢献できているという実感も子どもたちは持ちやすいようです。

魅力3 ゲームへの参加から豊かな運動量がもたらされる運動

このようにゲームに参加するために必要となる個人的技術が他のボールゲームに比べてやさしいことは、どの子もゲームへの参加が自然と促されることになりますから、そこから結果として豊富な運動量がもたらされるということも、タグラグビーの魅力として3番めに上げることができます。

攻めでも守りでも、子どもたちが汗をびっしょりかいて元気に走り回る姿をタグラグビーの授業では見ることができるのです。しかも、そこではただ走っているだけではなく、方向を変えたりスピードを変えたり、多様な動きがたくさん現れます。そういった点からは、敏捷性やバランス感覚が自然に養われていく経験としても期待できます。

魅力4 個人差や男女差が顕在化しにくい運動

さらに、そのようなタグラグビーは、他のボールゲームに比べると個人差や男女差が顕在化しにくいということを4番めの魅力として挙げておきましょう。

タグラグビーは、多くの子どもにとってはじめて出会う運動種目ですから、サッカーやバスケットボールにおいて見られるような個人差や男女差はほとんど存在せず、スタートはみんな一緒です。もっとも、スタートは一緒でも難しいボールゲームであったら直に運動が得意な子だけが適応して個人差は生まれてしまうでしょうが、タグラグビーは苦手な子も参加しやすいやさしいゲームなので、個人差や男女差が顕在化しにくいということなのです。

ここまで述べてきたタグラグビーの魅力については、どの子にも得点経験がもたらされることや運動量が保障されることをはじめ、授業実践を分析した研究から多くのことが確かめられています。

※さらに詳しいデータは、小学館「公式BOOK だれでもできるタグラグビー」編著・鈴木秀人のコラムをご覧ください。

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