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教えよう - 新しい学習指導要領と「タグラグビー」

教えよう

新しい学習指導要領と「タグラグビー」

ところで、2008年に学習指導要領の改訂があり、小学校は2011年の完全実施に向けて現在は移行期間です。ですから、タグラグビーを体育の授業で取り上げるための検討を進めている学校では、新しい学習指導要領との関係が気になると思います。そこでここでは、とくにタグラグビーと関わるボールゲームに関連した部分を中心に、新しい学習指導要領について少し触れておくことにします。

表 小学校体育の領域構成と内容

表は、今回の改訂によって新たに示された小学校体育の領域構成と内容です。この中でボールゲームと関連するのは、低学年と中学年の「ゲーム」領域と高学年の「ボール運動」領域ということになります。ここでの大きな改訂は、これまで中学年のゲーム領域ではバスケットボール型ゲーム、サッカー型ゲーム、ベースボール型ゲームとして示していた内容を、また、高学年のボール運動領域ではバスケットボール、サッカー、ソフトボール又はソフトバレーボールと種目名で示していた内容を、中・高学年ともゴール型、ネット型、ベースボール型という名称の3つの型で示したことです。

ここで注意しなければならないのは、新しい学習指導要領が言う3つの型とは、先に“ボールゲームの分類論からの検討”で紹介した表の分類論が言うところの攻守混合系をゴール型、攻守分離系をネット型、そして攻守交代系をベースボール型と呼んでいるということです。
したがって、タグラグビーは攻守混合系の陣取ゴール型ですから、新指導要領ではゴール型の中に位置づけられるわけです。

新しい学習指導要領の解説でも、中学年のゴール型ゲームの例示として、他のいくつかのゲームとともに「タグラグビーやフラッグフットボールをもとにしたやさしいゲーム(陣地を取り合うゴール型ゲーム)」(小学校学習指導要領解説体育編、2008:p.52)が、また高学年のゴール型ゲームの例示として、「タグラグビー、フラッグフットボール」(同解説書,p.73)がバスケットボールやサッカーやハンドボールとともに示されています。
ゴール型と聞くと、サッカーのゴールやバスケットボールのリングのような目標物としてのゴールがあるもの、とついイメージしてしまうかもしれませんが、新指導要領が言うゴール型は、解説の例示からも理解されるように、陣取ゴール型までを含む攻守混合系を総称するボールゲームのグループを指して使われているのです。

そして新しい学習指導要領は、中学年でも高学年でもゴール型、ネット型、ベースボール型の3つの型のボールゲームを教えなければならない運動としていますが、従来の指導要領のように、特定の運動種目を教えなければならないと規定してはいません。

これまでは、いくつかの種目を教えることと規定した上で、たとえば高学年では「地域や学校の実態によっては-(略)-その他のボール運動を加えて指導することができる」 (小学校学習指導要領,1998:p.83)としていたわけですから、ここは注目される点です。
これまでと対比させてみると、新しい学習指導要領では高学年のボール運動のゴール型では、バスケットボール及びサッカーを「主として取り扱うものとするが、これらに代えてそれぞれの型に応じたハンドボールなどのその他のボール運動を指導することもできるものとする」(小学校学習指導要領,2008:p.100)としているのです。

つまり、ゴール型であればどのボールゲームを取り上げるのかはまさにそれぞれの学校に委ねられたというわけです。だからこそ、目の前の子どもたちにとってより豊かな体育の学習が現実のものとなるために、どのボールゲームをどの学年で教えることがよいのかを、各学校で検討していくことが期待されます。
これまでは取り上げられてこなかった運動は、ともするとその斬新さだけに目を奪われて十分な検討もないままに授業の中に導入されることがあります。

タグラグビーは、小学校のボールゲームの授業をめぐる問題へ対応できる種目という可能性を有することから、幾多の議論を経ながら新しくカリキュラムへ導入する積極的な意味がある運動種目として認められつつあります。
体育で教えるボールゲームの選定にあたっては、これまでタグラグビーをめぐっておこなわれてきたような検討が、他の種目についても十分におこなわれていくことが必要になると言えるでしょう。

■ 文部科学省ホーム・ページ
http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/new-cs/youryou/syokaisetsu/index.htm
小学校学習指導要領解説「体育編」のPDFをダウンロードしていただくと、以下のように、タグラグビーについての記述があります。

50頁:3~4年生で行うゲーム例示に「タグラグビーやフラッグフットボールを基にした易しいゲーム」
72頁:5~6年生で行うボール運動の例示に「タグラグビー、フラッグフットボール」が明示されました。

※小学館「公式BOOK だれでもできるタグラグビー」編著・鈴木秀人より引用

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